日本初のメダル攻めのカーリング

平昌五輪の女子カーリング日本代表、ロコ・ソラーレ(LS)北見が銅メダルを獲得した。ロコ・ソラーレは「太陽の常呂(ところ)っ子」を表すことば。日本代表決定戦を戦ったライバル、中部電力チームから見た横顔も交えてLS北見の強さを探る。

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PYEONGCHANG 2018 CURLING

世界ランキングは6位、
メダル圏内の実力

女子カーリングの世界ランキング(2017~18)
1カナダ
2スイス
3ロシア
4スコットランド(英国)
5スウェーデン
6日本
7米国
8韓国
9デンマーク
10中国
11ドイツ
12チェコ
13イタリア
14フィンランド
15ノルウェー

出典:国際カーリング連盟

カーリングは、約40メートル先にある円(ハウス)の中に、石(ストーン)を投げ入れて得点を競うスポーツだ。2チームがストーンを投げ合い、ハウスの中心により近い石を、より多く投げ入れることができたチームが勝つ。1998年の長野五輪で正式種目に採用された。

日本女子の最新の世界ランキング(2017~18シーズン)は6位。前シーズンより一つ順位を上げた。平昌五輪では世界ランキング上位10チームが総当たりで予選リーグを戦い、上位4チームが決勝トーナメントに進む。予選を6勝すれば、メダルが射程圏に入る。LS北見は年を追うごとに実力をつけてきた。16年の世界選手権で日本初の銀メダルをとった。17年12月の軽井沢国際選手権では初優勝し、このときの準決勝では世界ランク2位のスイスを倒している。


若いチームを
支える主将
CAPTAIN

本橋 麻里

  • 1986年6月10日生
  • 北海道北見市出身

「マリリン」の愛称で知られるカーリング日本女子代表の〝顔〟は、自身3度目の五輪に挑む。明るい笑顔と豊富な経験に裏打ちされた強いリーダーシップを発揮し、若いチームを引っ張る。今季はリザーブに回ることが多いが、スキップやサードもこなすオールラウンドプレイヤーだ。

3度目の五輪、
地元愛でチームを創設

チーム青森のメンバーとして06年のトリノ、10年のバンクーバー五輪に出場した。故郷北海道北見市に戻り、10年8月にLS北見を創設。「地元出身のメンバーで五輪に出場したい」との決意から、選手やスポンサー集めに奔走した。

安定したショットが持ち味で、リザーブでも入念な準備を欠かさない。途中出場でも残り秒数を正確に把握し、試合にすっと溶け込んでいく。

12年に結婚し、15年には長男を出産した。「オンとオフがないと生活が回らない私にとって、子育てがカーリングに良い影響を与えている」と話す。趣味は散歩と家の整理整頓という。

ライバルが見た 本橋麻里の強さ

本橋選手はどこのポジションでもこなすオールマイティープレーヤー。勝負強く、ここ!という場面で決める選手です。気さくで頼りになるお姉さんという印象で、落ち着いた雰囲気と豊富な経験値でチームをまとめています。妊娠中や出産後もすぐにチームに戻れるようトレーニングを続けていたと聞きました。根っからのスポーツマンだと思います。

清水 絵美 中部電力・女子カーリング


最初に投げる人リード LEAD

吉田 夕梨花

  • 1993年7月7日生
  • 北海道北見市出身

「チーム最年少ながら、落ち着いていて気遣いができる」。周囲はそう評する。ストーンのスピードを見る目に定評があり、スイープでチームメートのショットを支える姿から、小野寺亮二コーチは「職人さん」と呼ぶ。

北海道北見市出身。5歳からカーリングを始める。北見市立常呂中学時代に、チームメートの姉、吉田知那美選手らとともに「常呂中学校ROBINS」を結成。06年に日本選手権で3位入賞を果たし、中学生旋風を巻き起こした。

平昌五輪は「心と体のバランスが非常に重要」と冷静に話す。好きな食べ物は母親が作ったおにぎりと鳥の唐揚げ。趣味はスポーツ観戦や映画観賞。

リードの役割とは

最初に投げる人。ドローが得意。スイープ力がある。

リードとセカンドは合わせて「フロントエンド」と呼ばれる。

主要なショット

カムアラウンド

石の裏に綺麗に隠す

ストーンの後ろに回り込んで止めるショット。相手の投球で、自分のストーンがはじき出されないようにしたい時などに使う。通称、「カマー」と呼ばれる。

ウィック

石を少しだけ当ててずらす

各チームのリード(1番目に投げる選手)が投じる場合がほとんど。ルール上、両チームのリードが1投ずつ投げ終えるまで、フリーガードゾーン(ハウスの手前のエリア)にあるストーンをはじき出すことができない。このため、ハウス手前にある相手のガード役のストーンをはじき出さない程度に動かすときに使う。

ライバルが見た 吉田夕梨花の強さ

吉田夕梨花選手はゲームメイク職人。リードの投球はもちろん、スイーピングでも正確な判断で有利な試合展開へ持ち込みます。くせの強い石の性質をつかみ、上手く投げ方を変えるすごさがあります。印象に残っているのはウィックショットの精度の高さ。昨年12月の対戦では、完璧なプレイングでリードから差をつけられてしまいました。

石郷岡 葉純 中部電力・女子カーリング


2番目に投げる人セカンド SECOND

鈴木 夕湖

  • 1991年12月2日生
  • 北海道北見市出身

身長145センチと小柄ながら、日本屈指のスイープ力を誇る。カーリングは強いスイープができる大柄の選手が有利といわれる中、「カーリングの常識を覆した。彼女のスイープが何度もミスショットを救ってきた」(敦賀信人・日本カーリング協会強化委員会副委員長)。 北見工大時代にはバイオ化学を専攻するなど「リケジョ」の一面も併せ持ち、遠征中、チームメイトを前に卒業論文の発表練習をしたエピソードもある。

北見市体育協会所属。好きな食べ物はイチゴ味のヨーグルト。「どうでもいい話をする」のが趣味。動物好きで、自宅で愛犬とともに過ごす時間を何より大切にしている。

セカンドの役割とは

2番目に投げる人。テークアウトショットが得意。スイープ力がある。

主要なショット

ランバック

「玉突き」で相手のストーンを弾く

カムアラウンドが成功率が低い時に選択するショット。まず手前にある味方のストーンに当て、その石をハウスの中心に動かしつつ、相手の石にも当ててハウスの外に弾き出す。

ダブルテークアウト

一投の石でふたつの石をはじき出す

攻守両面で使い、相手のストーンを1投で2つはじき出すショット。1試合で計10回の各エンド終盤に、スキップ(4番目の投げ手)が大量得点を取ったり、相手の石をはじき出して劣勢からの巻き返しを図る。

ライバルが見た 鈴木夕湖の強さ

海外選手に負けない力強いスイープや、ストーンが滑る強さを正確に判断できるところが印象的です。かけ声も大きく、非常にパワフルな選手です。試合で集中している真剣な表情を見て、ONとOFFの切り替えがしっかりしていると思いました。夏の合同合宿で積極的に発言している様子を見て、頼れる選手という一面も感じました。

中嶋 星奈 中部電力・女子カーリング


3番目に投げる人サード THIRD

吉田 知那美

  • 1991年7月26日生
  • 北海道北見市出身

ミーティングで自作の紙芝居を披露してチームを盛り上げるなど、チームのムードメーカー的な存在だ。試合になると、スキップとリード、セカンドの中継役として情報共有を進めるチームのまとめ役でもある。

「吉田姉妹」の姉。北海道銀行の選手として前回のソチ五輪に出場。リザーブ登録ながら5位入賞に貢献した。だが、五輪後、チームから戦力外通告。失意の中、LS北見の主将、本橋麻里選手の誘いを受けて、故郷でのプレーを決意した。「五輪では今までチームでやってきたことをしっかりやり遂げたい」と話す。

好きな食べ物はイチゴと銀杏。趣味は一人旅。

サードの役割とは

3番目に投げる人。バイススキップとも呼ばれ、スキップが投げる時はハウスに立って指示を出す。

様々な展開に応じるため多彩なショットが得意。スキップと共に作戦を組み立てる。

主要なショット

ヒットアンドロール

ガードの後ろに隠す

ハウスに自分のストーンを置きたい時に使う。ストーンの速さの調節や、ピンポイントのコントロールが求められる。

フリーズ

石にくっつける

ハウス内に既にあるストーンにくっ付けるショット。少し弱めに投げて、スイープの力加減で止める位置を調整するのがコツとなる。

ライバルが見た 吉田知那美の強さ

吉田知那美選手は、歌手のように通るコールの声(かけ声)が魅力的です。隠れたストーンをソフトウェート(軽く滑る強さ)で出すショットが上手だと思います。吉田選手をはじめ、いつも通りニコニコしているLS北見さんらしい試合をして、ぜひ金メダルをとってきてほしいと思います。

北沢 育恵 中部電力・女子カーリング


4番目に投げる人スキップ SKIP

藤沢 五月

  • 1991年5月24日生
  • 北海道北見市出身

リスクを恐れない超攻撃的なショットが持ち味の司令塔だ。ジュニア時代からスキップとしての頭角を現しており、その実力は、ライバルチームも認める。中部電力時代は日本選手権で4連覇。15年春、LS北見に移籍した。

五輪出場を目指す気持ちは人一倍強く、この4年間、走り込みや体幹トレーニングで体づくりに励んだ。17年9月、古巣の中部電力を倒した五輪代表決定戦について、小野寺コーチは「氷の読みが抜群だった。テークアウト(石を外に出す)でも十分な場面を、ドロー(石を狙ったところに置く)で狙いに行く強気な面が良かった」と振り返る。

趣味は500円玉貯金。明るい性格で、常呂町のカフェで女子トークに花を咲かせる。

スキップの役割とは

4番目に投げる人。作戦を組み立て、指示を出す司令塔。

試合を決する局面で登場するため、正確なコントロールが求められる。カナダなど強豪国では、スキップがメンバーを集めてチームを作っている。

主要なショット

ドロー

石を意図した場所に止める

ストーンを決まった場所に止めるショットのこと。ガードをつくる時などに使われる。

ダブルロールイン

ハウスに入ってない石を2つ入れる

試合の終盤に、スキップが点を取りに行くときに使うケースが多い。

ライバルが見た 藤沢五月の強さ

藤沢五月選手は、カーリングが心から好きで負けず嫌いな性格だと思う。厳しい場面の難しいショットも決められる勝負強さがある。スーパーショットを決められることは藤沢選手の持ち味。平昌五輪では、世界のトップチームとのショットの応酬が見たい。LS北見さんの特徴である攻めの姿勢で、一戦一戦、面白い戦いを見せてくれると思う。

松村 千秋 中部電力・女子カーリング

取材・制作
清水明、伊藤岳、鎌田健一郎、丸山寛朝、大元裕行、櫻田優樹
写真
上間孝司、山本博文

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