2016参院選戦いのこれまでと今と

 参院選の結果はこれまでも日本の政治を大きく左右してきた。そんな戦いの歴史を振り返りながら、参院選について考える。

1人区攻防の歴史

 参院選で注目すべきは、1つの選挙区で当選者が1人しかいない改選定数1の「1人区」だ。今回の参院選で1人区は32選挙区まで増え、激戦も予想される。過去の参院選を振り返ると、1人区の戦績が全体の結果を左右してきたことがよく分かる。

1986

死んだふり、「衆参ダブル」で自民党圧勝

 1980年に続き、史上2回目の衆参同日選。中曽根康弘首相は同日選の思惑を隠し、定数是正に絡む「空白の1日」を利用して衆院を解散。「死んだふり」解散と呼ばれた。結果は、参院で自民党72議席、社会党20議席。衆院で自民300議席、社会85議席と自民が圧勝。このときの記録は衆参ともに自民の最多獲得議席として今もなお破られていない。選挙後、中曽根首相の自民党総裁任期は特例で1年、延長された。

衆院選との同日選に圧勝し、ダルマに目を入れる中曽根首相(自民党総裁)と金丸信幹事長

社会党の石橋政嗣委員長

上:衆院選との同日選に圧勝し、ダルマに目を入れる中曽根首相(自民党総裁)と金丸信幹事長
下:社会党の石橋政嗣委員長

1989

「山が動いた」、マドンナ旋風で社会党躍進

 この年4月の消費税導入、リクルート事件、宇野宗佑首相の女性問題などが自民党を襲った。1人区を3勝23敗とことごとく落とし、獲得議席は合計36にとどまった。55年体制以降で初めて改選第1党の座を社会党に奪われた。社会躍進の立役者は党トップの土井たか子委員長。「マドンナ旋風」を巻き起こし46議席を獲得。選挙後、土井氏の「山が動いた」との発言はこの年の流行語となった。一方で、宇野首相は退陣。これ以降、参院で自民の過半数割れが続くことになる。

ボードに当選のバラをつける社会党の土井委員長

「明鏡止水の心境」 自民党本部で辞任を表明した宇野首相(党総裁)

上:ボードに当選のバラをつける社会党の土井委員長
下:「明鏡止水の心境」 自民党本部で辞任を表明した宇野首相(党総裁)

1992

自民党勝利、新党ブームの萌芽も

 自衛隊を戦後、初めて海外に派遣する国連平和維持活動(PKO)協力法をめぐり、牛歩戦術などで荒れた「PKO国会」の後の国政選挙。自民党は1人区で24勝2敗と大勝し、計67議席を獲得。一方、社会党は22議席と惨敗した。この選挙で細川護熙氏が立ち上げた日本新党がブームとなった。初登場で比例 代表4議席を獲得し、翌93年衆院選での政権交代へとつながった。

笑顔の自民党の宮沢喜一首相(党総裁)と金丸副総裁

早々と当確を決め会見する日本新党の細川代表

上:笑顔の自民党の宮沢喜一首相(党総裁)と金丸副総裁
下:早々と当確を決め会見する日本新党の細川代表

1995

新進党、自民党に肉薄。投票率は戦後最低

 非自民政権は短命に終わり、94年に発足した自民、社会、さきがけ3党の連立政権で迎えた選挙戦。自民は46議席を得たが、非自民勢力が結集した新進党は比例代表で第1党、全体でも40議席を獲得して肉薄した。村山富市首相率いる社会は過去最低の16議席と落ち込んだ。一方、投票率は戦後最低の 44.52%。55年体制のような国の基本路線での違いがない分、争点は分かりにくくなった結果でもあった。

比例代表で当選を決めた候補者と握手する海部俊樹新進党党首ら

開票速報を見る河野洋平自民党総裁

上:比例代表で当選を決めた候補者と握手する海部俊樹新進党党首ら
下:開票速報を見る河野洋平自民党総裁

1998

自民党まさかの敗北、橋本首相退陣

 自民党は事前に60議席前後を確保すると予測されていたが、ふたを開けると44議席にとどまった。金融不安に加え、「恒久減税」をめぐる橋本龍太郎首相の発言のぶれが有権者の離反を招いたとされる。党幹部は「異変に全く気づかなかった」。1人区は15勝9敗だが、積極擁立した複数区で共倒れする選挙区が相次ぎ、比例代表も14議席とふるわなかった。選挙直前に結党した民主党は27議席と躍進。自民の対抗勢力として地歩を固めていくことになる。

次々と当選が決まり笑顔を見せる民主党の菅直人代表

惨敗で会見に臨む自民党の橋本首相(党総裁)

上:次々と当選が決まり笑顔を見せる民主党の菅直人代表
下:惨敗で会見に臨む自民党の橋本首相(党総裁)

2001

「小泉旋風」、自民党久々の大勝

 内閣支持率が10%台まで落ち込んでいた森喜朗首相に代わり、参院選の3カ月前に小泉純一郎氏が首相に就任。「自民党をぶっ壊す」と叫んで構造改革を訴える小泉氏の支持率は9割にもなり、自民党が64議席と大勝した。1人区は自民の25勝2敗。比例代表も20議席となり、86年の衆参同日選の22議席に次ぐ結果となった。小泉首相にとってこの選挙は5年半にわたる長期政権の礎となった。民主党は鳩山由紀夫代表のもと26議席と伸び悩んだ。

自民党本部で会見する小泉首相(党総裁)

戦い終え会見する鳩山民主党代表

上:自民党本部で会見する小泉首相(党総裁)
下:戦い終え会見する鳩山民主党代表

2004

民主党躍進、改選第1党に

 年金問題やイラクへの自衛隊派遣が争点となり、政権批判票を集めた民主党が50議席と躍進。自民党の49議席を上回り、初めて改選第1党となった。27ある1人区では与野党が互角の戦いを演じ、自民は14勝しかできなかった。選挙後、小泉首相は続投を表明したが、安倍晋三幹事長が敗北の責任をとり、幹事長代理に退いた。野党では共産、社民両党が議席を減らし、日本でも「二大政党制」の定着を印象づけた。

記者会見で笑顔を見せる岡田克也民主党代表

当選した竹中平蔵経財相と握手する小泉首相

上:記者会見で笑顔を見せる岡田克也民主党代表
下:当選した竹中平蔵経財相と握手する小泉首相

2007

自民党敗北、「衆参ねじれ」で政権交代へ

 年金記録漏れ問題や相次ぐ閣僚辞任で政権に逆風が吹くなか、自民党は37議席と89年に次ぐ歴史的敗北を喫した。29の1人区は6しかとれず、比例代表も当時の最少に並ぶ14議席にとどまった。民主党は60議席と大きく伸ばして参院第1党に。衆参両院で多数派が異なる「衆参ねじれ」が生まれた。安倍晋三首相は続投したが、2カ月後に突如、辞任を表明。民主への政権交代はこの2年後に訪れる。

テレビでのインタビューに答える自民党の安倍首相(党総裁)

民主党の小沢一郎代表は党本部で記者会見

上:テレビでのインタビューに答える自民党の安倍首相(党総裁)
下:民主党の小沢一郎代表は党本部で記者会見

2010

与党・民主党惨敗、再び「ねじれ」に

 前年の衆院選で民主党が政権交代を果たして以降、初の大型国政選挙だが、民主は44議席と惨敗した。選挙直前に鳩山由紀夫氏から菅直人氏に首相が交代。支持率はV字回復したが、消費増税を突然打ち上げたことなどが響き、支持率は低下していった。自民党は51議席で改選第1党を獲得。民主への政権交代を機に解消した「衆参ねじれ」が再び生じた。このほか、自民でも民主でもない「第三極」として、みんなの党が10議席を獲得し、躍進した。

自民党の参院第1党が確定し記者会見する谷垣禎一総裁

与党過半数割れとなり、記者会見する民主党の菅首相(党代表)

上:自民党の参院第1党が確定し記者会見する谷垣禎一総裁
下:与党過半数割れとなり、記者会見する民主党の菅首相(党代表)

2013

自民党大勝、「ねじれ」ようやく解消

 前年の自民党による政権奪還後、初の大型国政選挙。安倍晋三首相は自身の経済政策「アベノミクス」をかかげ、01年の小泉旋風を上回る65議席を獲得した。1人区は29勝2敗、比例代表は18議席と圧倒した。衆参両院ともに自民、公明両党で多数を占めることとなり、「衆参ねじれ」は解消。安倍首相は安定した政権運営の基盤を築いた。民主党は17議席と過去最低に終わった。共産党は12年ぶりに選挙区で議席を獲得した。

当確のバラをつける自民党の安倍首相(党総裁)

惨敗し、記者会見する民主党の海江田万里代表

上:当確のバラをつける自民党の安倍首相(党総裁)
下:惨敗し、記者会見する民主党の海江田万里代表

自民

非自民

  • 自民
  • 非自民

候補者は何をつぶやく?

与党

大阪

野党

与党

大阪

野党

 今や選挙戦に欠かせないツイッター。各候補者は何を訴えようとしているのか。注目される選挙区の「つぶやき」をのぞいた。浮かび上がる無数のワードを眺めるだけで候補者の戦略、地域性、選挙戦の状況がみえてくる。

6つのデータで見る参院選

 政権をどの政党に託すかを決める衆院選に比べて、どうも盛り上がりに欠ける参院選。ところが、様々なデータをながめると放っておけない事実も浮かび上がる。

投票率

 投票率は低下傾向にある。戦後の最低は1995年の44.52%。期日前投票の普及で投票率は下げ止まっているように見えるが、戦後2回目の50%割れの懸念は続いている。

当選者の平均年齢

 過去5回は50歳を超えている。今回の候補者を見ると、自民党は新人が少なく、前回より平均年齢は1.5歳上がっている。民進党も上がっており、当選者の大幅な若返りは期待できそうにない。

新人の当選者比率

 50%前後で推移している。今回は自民党の候補者で新人の比率が38.4%と大きく下がっている。若い力で既存の政治を打ち破ろうとする「第三極」の動きも乏しく、新人には狭き門となっている。

女性の当選者比率

 女性比率は伸び悩んでいる。2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%まで高めるという政府目標にはほど遠く、各党に今後、一層の取り組みが求められそうだ。

主要政党の獲得議席数

  • 自民
  • 公明
  • 民進
  • 共産

 自民党と民進党(旧民主党)の勢いの差が表れている。自民は第1次安倍政権下の2007年に大敗した後、獲得議席数はV字回復している。今回も前回並みの議席を確保できれば27年ぶりの単独過半数が実現する。

主要政党の比例得票数

  • 自民
  • 公明
  • 民進
  • 共産

 各党の集票力が一目で分かると言えるのが比例代表の得票数だ。自民、民進(旧民主)両党の動きだけでなく、公明、共産両党の得票数にも注目が集まり、800万票をめぐる攻防が激しさを増している。

制作
小嶋誠治、酒井恒平、甲原潤之介、根本涼、中山美里、
鎌田健一郎、清水明、安田翔平、清水正行、佐藤健

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