#4 トクする資産運用

資産運用を始めよう

給与明細からたどる
お金のこと


給与明細から税金や社会保険、年金など、生きていく備えとして必要なお金の仕組みがわかってきたと思います。ただ、それだけでは十分ではありません。手取りのお給料からコツコツ貯蓄することは大切ですが、さらに効果的に資産を増やす方法を考える必要があります。それが資産運用です。

投資って大丈夫?

「運用」「投資」ときくと、怖いと感じたり面倒くさいと思ったりする人もいるかと思います。けれども、もしこれまでの35年間、米国株に投資していたとしましょう。

出所:QUICK・ファクトセット

株式市場は良い時もあれば悪い時もあり、1年単位でみれば損失を抱えることもあります。最近も、新型コロナウイルスの影響で世界の株式相場が急落しました。ただ、35年間ではNYダウ(ダウ工業株30種平均)は約20倍に上昇しています。米国や世界の経済成長に合わせ、企業の業績も拡大しているからです。

資産作りは短期の勝ち負けではなく、長い目でコツコツ取り組むことが大切です。

運用の基本は
長期積み立て分散

長期運用でプロに勝つ

いざ資産運用を始めようとしたとき、何にどう投資すればいいのかわからない、という人は多いと思います。

資産運用は期間が長いほど有利に働きます。運用期間が長くなるほど「複利効果」が生まれますし、1年の単位では損失が出ても10年、20年の単位でみれば回復することが多いからです。株式市場には「素人がプロに勝てるのは時間である」という格言があります。顧客から預かった資金を運用するプロが1年単位で結果を求められるのに対し、個人は時間の長さを自分で決められます。

「長期」に加えて大事な原則が、「積み立て」「分散」です。投資の対象や時間を分けることはリスク回避につながります。

積み立て投資=時間の分散

積み立て投資とは一定額を一定期間ごとに続けて投資することです。

株式を売買する際には安値で買い、高値で売りたいものですが、実際にはそのタイミングを見極めるのはプロでも難しいです。積み立て投資によって、安い時に買わなかったり、高い時にだけ買ってしまったりすることを防げます。時間を分散するともいいます。

購入額を一定に定めることも重要です。投資対象の価格が高いときは買える量が減りますが、安いときにはたくさん買えます。この手法を「ドルコスト平均法」とよびます。毎月、一定の数量を買う場合(購入価格は変動)と比べると、購入単価を安くできるメリットがあります。

卵は1つのカゴに盛るな=投資先の分散

相場には「卵は1つのカゴに盛るな」という格言もあります。1つに盛って落とすと全部が割れてしまいますが、複数に分ければ1つがダメになっても他は割れずにすみます。投資も同じで、1つの銘柄や業種、地域、金融商品などに集中せず分散投資=バランス運用すべき、という意味です。

分散投資の組み合わせの例

個別株であれば、1銘柄ではなく業種の異なる複数の銘柄に、地域であれば日本だけでなく、米国など他の先進国や新興国を複数組み合わせて投資すると、リスク回避につながります。値動きが連動せず、逆の動きになれば分散効果は高まります。

投資する金融商品を分けることも大切です。投資の世界では国内の上場株式、国内債券、外国株式、外国債券の4つが「伝統的資産」として位置付けられています。通常は株式と債券は値動きが異なるため、機関投資家は一般的にこの4資産へ資金を分散しています。さらに最近は未公開株や不動産など従来とは異なる分野への投資も増やす傾向にあります。

投資家から資金を集めて、専門家が投資対象を選別して運用し、得られた利益を分配するのが投資信託です。様々な種類の資産に分散した投信を買えば、1つの投資先でも分散効果が得られます。

分散投資の事例として、私たちの年金資産を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産配分をみてみましょう。伝統4資産に偏りなく投資しています。

2020年4月から適用。カッコ内は乖離(かいり)許容幅。債券全体、株式全体では許容幅はそれぞれ50%±11%

非課税の投資制度を活用

投資を始めるには証券会社や銀行などで口座を開く必要があります。通常はこの口座で株式や投資信託を売買し、売却益や配当などの利益を得ると20%の税金がかかります

※従業員が掛け金を上積みするマッチング拠出は所得控除の対象

企業型DC(確定拠出年金)個人型のiDeCo(イデコ)を使うと運用益は非課税となりますが、同様に税金が免除されるのがNISA(少額投資非課税制度)です。国が個人の資産形成を「貯蓄から投資へ」促すために2014年に始めました。

現在、みなさんが使える制度には、最初に始まった「一般NISA」と18年に加えられた「つみたてNISA」があります。どちらも利用者が増えており、制度を使って開設された口座数は、19年末時点で一般NISAが1176万、つみたてNISAが188万となっています。

NISAを利用するにあたっては、通常の口座とは別に専用の口座が必要です。一般NISAは2024年に制度変更した上で2028年まで、つみたてNISAは2042年まで口座を開設できます。同じ年に使えるのは一般NISAかつみたてNISAのどちらか1つなので、選ぶ必要があります。

長期投資に向く
つみたてNISA

2つのNISAの違いは運用期間と非課税になる投資枠です。つみたてNISAは投資枠が年40万円、運用期間は20年です。

投資対象も異なります。つみたてNISAで投資できる金融商品は、金融庁がもうけた ①中長期の投資に向き、②手数料が低水準で、③投資対象が分散されている、という要件を満たす必要があります。4月1日時点で、投資信託を中心に合計181本が対象となっています。

運用期間の長さや商品の種類などから、長期投資により向いているのはつみたてNISAといえます。特に投資初心者や、収入や保有資産がまだ少ない資産形成層に、つみたてNISAが選ばれる傾向にあります。

幅広く投資できる
一般NISA

一方、一般NISAは非課税となる投資枠が年120万円、運用期間が5年です。

投資対象は投資信託だけでなく、国内外の個別株や、個別株のように株式市場で値段がつき売買できる上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)など幅広く投資できます。つみたてNISAと比べると、保有資産が大きく値上がりした時に売却し利益を得るなど、短期の取引に利用されることも多いようです。比較的、投資経験者や余裕資金のある人向きといえます。

DC・iDeCoとNISAの違い

税制優遇のある各制度ですが、いくつか違いがあります。1つは投資した資金の引き出し時期です。NISAがいつでも引き出せるのに対し、年金として位置付けられるDC・iDeCoは原則60歳まで引き出せません。

何に投資するか

DC・iDeCoは定期預金や投信

それぞれの仕組みで何に投資できるのでしょうか。まず確定拠出年金の企業型DCとiDeCoから見てみましょう。

※投資信託の投資先の例

DCでは加入先ごとに運用商品が決まっており、その中から加入者が選びます。商品は大きく「元本保証型」と「元本変動型」に分かれます。

前者は定期預金や保険などで元本が確保されますが、金利が低く資産を大きく増やすのには期待薄です。

後者は投資信託で、運用成果により資産を大きく増やせる可能性がありますが元本割れのリスクがあります。厚生労働省は個人が選択しやすいよう、運用商品を35本以下にするよう求めています。

iDeCoでは資産を管理する証券会社や銀行などを自分で決めた上で、商品を選びます。取扱商品はそれぞれ異なるので、事前に確認しましょう。

つみたてNISAは低コスト投信

次にNISAをみてみましょう。つみたてNISAでは長期投資に向く投資信託やETFが対象です。手数料を低く抑えるため、日本や海外の主要な株価指数に連動した「インデックス型」が9割近くを占めています。

※投資信託の投資先の例

一般NISAは国内外の個別株にも自由に投資できるのが特徴です。国内の個別株に投資するメリットとして、「株主優待」に注目する個人は多いです。企業が年に1度、株主に対して自社商品や商品券などを送ります。実施企業は年々増えており、大和インベスター・リレーションズによると19年9月時点で約1500社と、上場企業の約4割にのぼりました。

Quiz

私たちの年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は「伝統4資産」に分散投資しています。四半期に一度、運用実績を公表しており、2019年度は4~12月までの実績が分かっています。運用で出た利益または損失はいくらだったでしょうか。
  • A. 5000億円の黒字
  • B. 9兆円の黒字
  • C. 5000億円の赤字
  • D. 9兆円の赤字

クイズの答え

答えはBで、9兆4241億円の黒字でした。

この結果、2019年末時点のGPIFの運用資産額は約169兆円となりました。2019年は米中貿易摩擦への懸念がくすぶりながらも、米国の金融緩和などへの期待で、年後半に国内外の株式相場が上昇しました。黒字の内訳をみると、国内株式が3兆7170億円の黒字、外国株式が4兆7343億円の黒字で、株式が大きく貢献しました。

ただ、2020年1~3月は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で株価は急落し、GPIFの運用でも損失額が過去最大規模に膨らんだと予想されています。19年度通年でも4年ぶりの赤字になると見られます。

給料がわかると
人生が見える

今回の連載では、前半で給料として毎月振り込まれている金額がどのように決まり、保険料や税金がとられているかを説明しました。後半では将来に向けた資産作りは今から始めた方がいい理由と、資産運用の方法について解説しました。

日本ではお金の話をするのを避ける傾向がありますが、お金は今だけでなく、将来の生活に欠かせない資産です。お金の話を避けていたら、将来困ることにもなりかねません。そのためにも今もらっている給料の金額だけでなく仕組みを知り、何ができるかを考えてみましょう。若いうちから始められる今がチャンスです。