#1 「手取り」と「額面」の違い

給与明細からたどる
お金のこと


この春、新社会人になったみなさんはもう「初任給」を受け取りましたか? 昔はお給料を封筒で受け取っていましたが、今はほぼ銀行振り込みです。会社生活2年目、3年目を迎えても、もしかするとまだ給与明細を見たことがない人もいるかもしれません。

給料日には銀行口座の残高は増えているかもしれませんが、この「手取り」の金額は、会社がみなさんに支払う「額面」の給与とは異なります。一般に手取り額は額面給与の7~8割といわれます。つまりみなさんが受け取るのは給与から2~3割引かれた金額ということです。

何が、どう引かれているのでしょうか。知っているとタメになるお金の様々な仕組みを、給与明細から読み解いてみましょう。

まずは給与明細から

会社によって給与明細の形式は色々ある

まず給与明細を見てみましょう。その月にどれぐらい働いたかを示す「勤怠」、会社がいくら支払ったかを記載した「支給」、そこから差し引いたものを表す「控除」と、大きく3つに分かれています。

  • 勤怠… その月の出勤日数や労働時間、残業時間、欠勤・遅刻・早退日数などの勤務状況
  • 支給… 勤怠に応じて支払われる給与や残業代、通勤などの各種手当て
  • 控除… 支給状況に応じて差し引かれる社会保険料や税金。労働組合費や団体保険の保険料が引かれることも

いろんな項目があるけど…
結局もらえるお金は?

みなさんが受け取る毎月の「給与」は支給の欄にあり、「基本給」と「各種手当」の合計です。入社する前に「初任給」をチェックした人もいると思いますが、初任給は入社して最初に受け取る「基本給+一部の手当」のことです。この1年間の給与に、夏と冬などに受け取る「賞与(ボーナス)」を加えた金額が「年収」となります。

この給与から毎月「天引き」されるのが社会保険料と税金、その他の会社ごとに必要な費用などです。天引き後に受け取る金額が「手取り」と呼ばれ、給与明細には「差引支給額」などという名目で記載されています。

社会保険料は「厚生年金」「健康保険」「雇用保険」「介護保険(40歳から)」の4つ、税金は国税にあたる「所得税」と地方税の「住民税」の2つがあります。社会保険料や税金、その他の天引きについては次回に詳しく見ていくとして、シリーズ1回目はまず、会社からもらえるお金の中身を見てみましょう。

会社からもらえるお金1

基本給

基本給は年齢や勤続年数、職能(職務遂行の能力)、職務(仕事の内容)、役割、成果・業績などによって企業ごとに算定される基本賃金です。

日本企業では勤続年数で給与が上がる年功序列型の賃金体系が主流でした。最近では能力に応じて差を付ける仕組みへ変える動きもあります。

さて、みなさんは毎年春にかけて「春闘(春季労使交渉)」という言葉をよく耳にすると思います。企業や産業別に労働者で組織する労働組合というものがあり、会社との交渉を通じて賞与や賃金(基本給や手当)、労働条件などについて話し合います。主な要求に「ベア(ベースアップ)」と「定昇(定期昇給)」があります。

ベアは基本給の底上げ、定昇は年齢などに応じて毎年基本給を増やすことをいいます。会社側は業績や経済環境などを見ながら対応を決めますが、最近は一律の賃上げには慎重な姿勢を見せています。

会社からもらえるお金2

手当

基本給とは別に、残業や休日出勤などに支払われる賃金や、義務ではないものの福利厚生の一環として企業が独自に支給するのが手当です。

厚生労働省が2015年に全国約6300社(有効回答は約4400社)を対象に実施した「就労条件総合調査」では、期間を定めず、または1カ月以上の期間を定めて雇われる「常用労働者」の平均給与は約31万円で、うち諸手当が約4万2000円でした。諸手当のうち、支給している割合が最も高いのが「通勤手当」で92%にのぼりました。「家族手当・扶養手当・育児支援手当」など家族に関するものが67%、「住宅手当」は46%の企業が支給していました。

厚生労働省の「就労条件総合調査(2015年)」
時間外(残業)手当

会社は従業員が働く時間を、国が定める「法定労働時間」(1日8時間、週40時間)の範囲内で、「所定労働時間」として定めます。会社と従業員が約束した所定労働時間を超えた分については時間外手当が支払われ、法定労働時間を超えると割増賃金が支払われます。

労働基準法では、法定労働時間を超えた労働については「基礎賃金(基本給と一律に支給される手当)を時給換算した金額×1.25以上」を支払うよう定めています。法定の休日に勤務するなら「×1.35以上」、時間外労働が深夜(原則午後10時から翌午前5時まで)にかかった場合は「×1.5以上」となります。時給換算した賃金が1000円だとすると、時間外で深夜に勤務すれば1500円以上が支払われるということになります。

通勤手当

通勤への手当は一律だったり、実際にかかる費用だったりします。諸手当は基本的に所得税、住民税など税金の課税対象となりますが、交通機関や有料道路を利用する場合の通勤手当は1カ月あたり15万円まで非課税となっています。2016年に10万円から引き上げられました。厚労省の就労条件総合調査では、通勤手当を支給している企業の平均支給額は月1万1462円でした。

住宅手当

社員の賃貸物件の家賃や持ち家の住宅ローンの一部を会社が補助するものです。就労条件総合調査によると、住宅手当を支給している企業の平均支給額は月1万7000円でした。

家族手当(扶養手当)

家族を扶養している社員に対して支給するものです。配偶者のみを対象にした配偶者手当や、子どもを対象にした育児支援手当などがあります。配偶者手当の場合、配偶者の収入に制限があるものがほとんどです。就労条件総合調査では家族手当を支給している企業の平均支給額は月1万7282円でした。共働き世帯の増加や、仕事の成果とは直接関係のない手当の見直しなどに伴い、配偶者手当を縮小・廃止する動きもあります。

その他手当

ほかにも、単身赴任手当や資格手当、皆勤手当、会社の一定範囲内に住む人に払う近距離手当、少子化問題に対応した出産手当など、会社ごとにユニークな手当もあります。

会社からもらえるお金3

賞与

企業が従業員に支払う毎月の給与とは別に支給する特別な給料のことで、ボーナスや一時金ともいいます。一般に夏(6~7月ごろ)と冬(12月ごろ)の年2回支払われます。「年収」には賞与も含まれます。

労働組合がある場合、金額は労組と会社との交渉で決まります。毎年の積み増しを求める労組もありますが、業績に応じて金額を増減させる「業績連動型賞与」の仕組みを採用する企業も多いです。

日本経済新聞社がまとめた2019年冬のボーナス(賞与)調査を見てみましょう。米中貿易摩擦の影響などもあり、全産業の平均支給額は7年ぶりにマイナスとなっています。

Quiz

最後にクイズです。諸手当にはユニークなものもあると説明しましたが、以下のうち実際に存在するものはどれでしょうか。
  • A. 本社の近くに住むと月5万円の家賃補助
  • B. がんの治療と就業の両立を支援する手当
  • C. 病気やケガで働けなくなったときに60歳まで一定額を補償
  • D. 在宅勤務に必要なパソコンやイスの費用を補助

答えは、全てあります。

A. 会社から近距離に住むと住宅手当が手厚くなるという制度は複数の会社が導入しています。例えばZOZOは本社のある千葉市の海浜幕張近郊に住むと月5万円を支給し、社員の6割以上が利用しています。

B. ライフネット生命保険が、がん治療をしながら働き続けることをサポートするため導入しました。復職後半年間、通院や通勤のためタクシーを使うなどの出費を補助するため月5万円を支給します。

C. ヤフーが「長期所得補償制度」として設けています。健康保険組合が手当金を支払う期間が過ぎた後も、会社が標準報酬月額の60%を満60歳まで補償します。

D. Chatwork(チャットワーク)が新型コロナウイルスの感染予防で、社員に在宅勤務を義務付けた際に「一歩先の働き方支援制度」として採り入れました。在宅勤務に必要な製品1つあたり購入金額の半分(上限5万円、年間上限15万円)を会社が補助します。