#3 少しだけ年金を考える

給与明細からたどる
お金のこと


せっかく備えるなら

年金って聞くと、まだまだ先のことだしと思ってしまいがちです。確かにもらうのはだいぶ先のこと。でも自分の年金を理解しておくのは、若ければ若いほどいいのです。なぜなら、運用は長い時間をかけてやる方が成果(リターン)も大きくなりますし、今の税金が軽くなることもあるからです。

今の税金が軽くなる

※ 課税所得300万円でiDeCoで月2.3万円積み立てる場合の試算。

年金の中には、自分でお金を出して老後に備えるものがあります。毎月いくらと決めて貯金しておくようなものです。この毎月出すお金が、2回目で取り上げた税金の支払いに関係してきます。積み立てた額が「所得」から控除されるため、その分税金が減ることになります。所得の大きさにもよりますが、その額は年間10万円になることもあります。

貯金と違って60歳まで引き出すことができず、受取時には税金もかかります。自分で運用するため、期間中の運用成績によって老後にもらえる額が変動するリスクもあります。それでも受取時の税負担軽減策もあり、同じ老後に備えるなら貯金と比べたメリットを感じられるはずです。

みんなが入る年金と
それぞれ違う年金

国民年金は20歳以上になると必ず加入することになっています。保険料は定額で2021年度の場合は月1万6610円です。

厚生年金は国民年金に上乗せされる年金です。企業に勤めている人は強制的に加入となります。保険料は標準報酬月額の18.3%で、企業と従業員が半分ずつ負担します。会社勤めの人は厚生年金保険料に国民年金保険料が含まれています。2015年には公務員が加入していた共済年金も厚生年金に統一されました。

国民年金と厚生年金を公的年金とも呼びます。日本の年金制度は賦課方式といい、私たちの保険料は現在の高齢者の年金として支払われています。保険料を納めた記録や将来の年金給付の見込み額については毎年、誕生月に「ねんきん定期便」として現在の状況が送られてきます。インターネットで自分の年金の状況や、将来の年金見込み額を様々な条件で試算できる「ねんきんネット」というのもあります。

公的年金に上乗せする3階部分を私的年金といいます。企業年金や個人型の確定拠出年金などで、勤め先によって内容が異なります。

年金は老後にどれくらいもらえるのでしょうか。公的年金制度についてQ&A形式でわかりやすく解説した記事を読んでみましょう。

3階部分
誰が払って運用?

私的年金には「掛け金を誰が出すのか」「誰が運用するのか」によっていくつか種類があります。

企業年金があるかないか、あってもどんな制度を採用しているかは企業によってバラバラです。

※ DCは自分で追加の掛け金を出せる場合もある。
私的年金 1
もらえる額が決まっている
確定給付年金(DB)

確定給付年金とはその名の通り、もらえる額(給付)が決まっている年金です。英語の Defined Benefit Pension Plan の略でDBとも言います。

会社が福利厚生の一環として、従業員の老後のために掛け金を出して運用し、退職後に支給します。運用がうまくいかなくても会社が穴埋めするため、決まった給付が受けられます。運用の責任を負う会社の負担が大きいため、採用する企業は減少傾向にあります。

いつから、いくらもらえるかは会社の制度によって異なります。月々の掛け金も会社が出しているため、給与明細には載りません。制度の内容は勤め先の年金基金などに問い合わせるとわかります。

私的年金 2
自分で運用する
確定拠出年金(DC)

DBと異なり、会社が出す掛け金が決まっている年金です。
英語の Defined Contribution Plan の略でDCとも言います。会社が出した掛け金を従業員が運用し、元本と運用収益を将来受け取るタイプを企業型DCといいます。

企業型DCには従業員が追加で掛け金を拠出する「マッチング拠出」という制度もあります。追加で出せる掛け金は会社が出している掛け金と同額までで、両者合わせて月5万5000円まで(年金制度が企業型DCのみの場合)と限度額が決められています。マッチング拠出で自分で出した掛け金は所得控除の対象となり、その分税金が軽くなります。

私的年金 3
自分で決めてメリットも大きい
iDeCo(イデコ)

英語の Individual-type Defined Contribution Pension Plan の略であるiDeCoは個人型確定拠出年金といいDCの一種です。自らが拠出額を決めて、自ら運用して、将来元本と運用収益を受け取ります。

掛け金には限度額があります。企業年金制度がない会社に勤める会社員の場合、月2万3000円までとなります。DBがある企業の場合は月1万2000円になっています。

iDeCoの掛け金は所得控除の対象となります。その分税金が減ることになります。月2万3000円で課税所得500万円程度(所得税率20%)の場合、住民税と合わせ年8万2800円も税金が減ります。

税負担軽減額
年間掛け金
課税所得14.4万円
の場合
27.6万円
の場合
195万円以下21,600円41,400円
195万円超〜330万円以下28,800円55,200円
330万円超〜695万円以下43,200円82,800円
695万円超〜900万円以下47,520円91,080円
900万円超〜1800万円以下61,920円118,680円

※ iDeCoに加入した場合の所得税・住民税負担軽減額

年金は給与明細からは分からないことが多いです。DBは明細に載りませんし、iDeCoは会社からもらった給与で自分で始めるものだからです。DCの場合は会社の掛け金やマッチング拠出で天引きされている額が給与明細に載ることがあります。

年金は複数を
組み合わせられる


勤め先に年金制度がない場合、iDeCoが月 2.3万円(年27.6万円)まで可能。

年金制度がDBのみの場合、iDeCoが月1.2万円(年14.4万円)まで可能。

年金制度がDCのみでマッチング拠出がなく、規約で認められていればiDeCoは月2万円(年24万円)まで可能。

年金制度がDBとDCの併用でもDCにマッチング拠出がなく、DCの規約で認められていればiDeCoは月1.2万円(年14.4万円)まで可能。

年金制度にDCがあり、マッチング拠出もできる場合は、DBのあるなしにかかわらず、iDeCoはできない。

勤め先の年金制度によって、できる組み合わせは異なります。担当部署もしくは先輩に聞いてみましょう。

運用期間は
長いほど有利に

年金を今から考えておいたほうがいい一番大きな理由は税金のメリットが得られることですが、それだけではありません。

資産運用で重要なポイントは「長期」「積み立て」といわれます。

運用期間が長くなるほど、複利効果が生まれます。月3万円を積み立てて、年3%で運用したことを考えましょう。1年目は年36万円に3%の利息が付きますが、2年目には1年目に利息が付いた額(約37万円)に3%の利息が付きます。それが雪だるま式に膨らんでいき、35年運用した場合ではそのまま貯金した場合と比べ、約1000万円も多くなります。

では運用するにあたって、どんな商品があるのか、どのように選べばいいのかは4回目で考えていきましょう。

Quiz

入社5年目のあなたの課税所得は400万円まで増えました。勤め先には企業年金がなく老後に備えようと考え、先輩に勧められたiDeCoを始め、掛け金を上限まで出しました。税金はいくら減りますか。(所得税20%、住民税10%とします)
  • A. 4万3200円
  • B. 8万2800円
  • C. 0円

クイズの答え

答えはBです。

勤め先に企業年金がない人はiDeCoに月2.3万円(年27.6万円)まで掛け金を出すことができます。この掛け金は全額所得控除の対象となります。課税所得は372万4000円で、税金は所得税と住民税合わせて68万9700円になります。何もしなければ税金は77万2500円なので、差額は8万2800円になります。

好きな服や靴、趣味のものを買えるぐらいの金額が浮くことになります。