日本診断
03
明日は日本がNo.1 秘めた強み力に

日本で四半世紀続いたデフレ体質や賃金低迷に変化が表れた。治安や医療アクセスの良さは今も世界が憧れる水準だ。新型コロナウイルス禍を経て、鍛えた観光力が実を結びつつある。再興へ、強みをとことん突き詰めよう。2024年1月1日に始まる連載「昭和99年 ニッポン反転」は、経済社会が活力を取り戻す道しるべを示す。

01

豊かさの「体幹」向上中
21年は過去最高に

国民にとって生活の豊かさはいわば「体幹」だ。若返りや肥満脱却にはトレーニングが欠かせない。

国連開発計画(UNDP)が公表する人間開発指数(HDI)が参考になる。2021年版で日本は主要7カ国(G7)で4位で、191カ国・地域中19位だった。1990年からほぼ一貫して上昇し、21年に過去最高を記録した。

米国は21位、中国は79位と日本より低い。大阪大の堂目卓生教授は「理系に進学する女性の少なさなど、教育におけるジェンダー格差の是正が指数改善へ重要になる」と語る。

社会的な豊かさは改善している

国連開発計画の人間開発指数(HDI)

02

治安・医療・交通網
鍛えた社会基盤に強み

一部に衰えがみえるとはいえ、社会インフラの質の高さは折り紙つきだ。乳児死亡率や若者失業率は経済協力開発機構(OECD)加盟国で最も低い。交通死亡事故の発生率の低さもノルウェー、スウェーデンなどに続く7位だ。

国際空港の定時就航率は羽田空港が世界トップ。日本人にとって当たり前の医療アクセスや治安の良さ、交通利便性といった頑丈な背骨はいまも世界に誇れる状態だ。

医療アクセスや治安のよさは世界トップクラス

乳児死亡率

新生児1000人当たり人数

出所は経済協力開発機構(OECD)。22年まとめ

空港の定時就航率

予定時刻から15分以内に出発したフライトの割合(%)、()内はフライト数

出所は英航空情報会社シリウム、国際空港部門。22年時点

若者失業率

15~24歳失業率(%)

出所はOECD。22年まとめ

10万人当たり交通事故死亡者数

(人)

出所は交通事故総合分析センター。21年時点

03

「再訪したい国」世界一
観光が地域潤す

「再訪したい国」、日本が世界一

1.
2.
イタリア
3.
ギリシャ
4.
アイルランド
5.
ニュージーランド
6.
スペイン

出所は米旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」の読者投票ランキング「リーダーズ・チョイス・アワード2023」

伝統や食文化、豊かな自然はユニークな魅力を保っている。観光地としての人気は高く、米国の大手旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」の読者投票で「再訪したい国」1位に選ばれた。

円安を追い風に、10月の訪日外国人数は新型コロナウイルス禍前を超える251万人に達し、地域経済を潤している。

04

世界で駆けるアスリート、
日本に活力

大谷翔平、渡辺雄太、久保建英――。体格やパワーで欧米に劣りがちだった日本人が、世界で華々しい活躍をみせていることも見逃せない。夏季五輪の金メダル数は21年の東京五輪で過去最多を更新した。24年のパリ五輪での躍進にも期待がかかる。

夏季五輪の金メダル獲得数は最多に

金メダル獲得数

出所は日本オリンピック委員会(JOC)

スポーツの活気、社会の原動力に

空気感指数「活気」の推移

空気感指数

出所は野村総研。X(旧ツイッター)の投稿から17~21年の平均値を1とし、1週間平均で算出

2023年3月 WBC優勝

2023年3月 WBC優勝

2021年7月 東京五輪

2021年7月 東京五輪

野村総研がSNS投稿をもとに算出する「空気感指数」をみると、野球のWBC優勝を決めた23年3月に「活気」が最高潮に達した。アスリートの活躍をきっかけに病も不景気も吹き飛ばしたい。

05

ジェンダー格差解消へ、
不平等は万病の元

社会にはびこる不平等は万病の元だ。積年の課題だったジェンダー格差は徐々に改善しつつある。男性の育休取得率は12年度の1.89%から22年度に17.13%に上昇した。選挙では23年春の統一地方選で、市議当選者(政令市除く)の女性比率が22%と初めて2割を超えた。

ただ世界に劣後した状況に変わりはない。男女平等の度合いを示す23年の「ジェンダーギャップ指数」では125位で過去最低となった。伸びしろとみて、重点的に体質改善したい。

ジェンダー格差はじわり解消

育休取得率

%

出所は厚生労働省「雇用均等基本調査」。2011年度は岩手、宮城、福島を除く

女性社長比率

%

出所は帝国データバンクの全国「女性社長」分析調査。全国約119万社を対象に女性が社長(代表)を務める企業を分析

市議選当選者に占める女性の割合

%

出所は総務省。政令市除く

パートナーシップ制度導入自治体数

自治体

出所は渋谷区と認定NPO法人虹色ダイバーシティの共同調査。18年と19年は7月時点、両年以外は6月時点

06

日本株に反転の兆し、
2024年こそ肉体改造

企業は地力を取り戻しつつある。日経平均は23年4月から大きく伸び、一時33年ぶりの高値水準となる3万3000円台に回復した。パフォーマンスだけ見れば米国のS&P500種株価指数を上回る。24年1月に始まる新しい少額投資非課税制度(NISA)が「貯蓄から投資」をさらに加速する。

「半導体」にも再興の芽が出ている。日本は製造装置や部素材で高シェアを維持してきた。24年には台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場が稼働する。

日経平均は一時33年ぶりに3万3000円台に回復

日経平均株価の推移

日経平均株価の推移

株価は12月7日時点

2023年の日経平均と米S&Pの上昇率

2023年の日経平均と米S&Pの上昇率

出所はQUICK。22年末=100として指数化

半導体の製造装置や素材分野では高シェアを保つ

半導体製造装置の各国シェア

%

半導体製造装置の各国シェア

主要半導体部材の各国シェア

%

主要半導体部材の各国シェア

出所は英調査会社オムディア、21年度実績、四捨五入の関係で合計しても100にならない

日本が飛躍にカジを切る準備はできている。経済・社会・文化それぞれの分野で、また世界を驚かせよう。

昭和99年 ニッポン反転

2024年1月1日から「昭和99年 ニッポン反転」を連載します。