男子 五輪フィギュア男子、
メダルの行方は?
有力選手の自己ベストを分析

(写真左上、右上=ロイター)


羽生VS.チェン
五輪王者へ一騎打ち

北京五輪のフィギュアスケート男子は五輪3連覇を目指す羽生結弦と初優勝を狙うネーサン・チェン(米国)が今シーズン初めて同じリンクに並び立つ。2014年ソチ、18年平昌と五輪2大会で金メダルを手にした羽生は「前回、前々回とはまた違った強さで五輪に臨みたい」と気合十分。対するチェンは5位に終わった平昌大会以降、世界選手権3連覇(新型コロナウイルス禍に伴う中止を挟む)を果たすなど常に世界のトップを走ってきた。五輪という4年に一度しかない舞台のメダル争いは両雄を中心に展開される見込みだが、他の日本選手も表彰台の可能性は十分だ。有力選手の自己ベストの得点分析からメダルの行方を占う。

※自己ベストは北京五輪開幕前までの国際スケート連盟(ISU)公認のトータルの得点を比較した

男子ショートプログラムは8日、フリーは10日に実施される。

※ビンセント・ゾウ選手は新型コロナウイルス検査で陽性と判定され、欠場となりました


世界最高得点は
チェン

各選手の自己ベストの比較
  • ショートプログラム
  • SPジャンプ
  • フリー
  • フリージャンプ

最も高い自己ベストを持つのがチェン。335.30点は世界歴代最高得点で、羽生の自己ベストよりも10点以上高い。大きなルール改正のあった平昌五輪以降、300点を超えているのはこの2人だけだ。順当にいけば金メダル争いは両者に絞られるが、290点台を持つ鍵山優真と宇野昌磨、ビンセント・ゾウ(米国)も自己ベストを更新するような演技を見せれば2人に割って入ってきそうだ。表彰台争いも接戦が予想される。

ジャンプが勝負のポイントに

勝負を分けるポイントの一つとして注目したいのがジャンプだ。ジャンプは1本ごと(連続ジャンプも1本に数えられる)に採点され、スピンやステップなどよりも得点の比重が大きく、転倒などのミスがあると得点が低くなってしまう。各選手はショートプログラム(SP)では3本、フリーでは7本のジャンプを跳び、SPの最後の1本、フリーの後半(5~7本目)のジャンプは基礎点が1.1倍になる。もちろん、表現力なども重要な要素だが、ミス無くジャンプをそろえられるかがメダルの行方を左右する。

各選手の自己ベスト内訳の比較

選手名をクリックすると比較したい選手を選べます

TOTAL 300.00

TOTAL 300.00

TOTAL 300.00

羽生

TOTAL 300.00

鍵山

TOTAL 300.00

宇野

TOTAL 300.00

チェン

TOTAL 300.00

ゾウ

TOTAL 300.00

ブラウン

TOTAL 300.00

ショートプログラム

技術点

演技構成点

ジャンプ
※2

スピン

ステップ

スケート
技術

要素の
つなぎ

演技

構成

音楽の
解釈

フリー

技術点

演技構成点※1

ジャンプ
※2

スピン

ステップ
など

スケート
技術

要素の
つなぎ

演技

構成

音楽の
解釈

※1男子フリーの演技構成点は各項目の点数が2倍になる
※2ジャンプの点数は1本ごと(ショートプログラムは3本、フリーは7本)に表示

羽生は
4回転半ジャンプで勝負

自己ベストの内訳を見ていくと、チェンの強さは際立つ。比重が高いジャンプの得点も羽生ら日本勢を上回り、演技構成点も高く、穴が見当たらない。ただ、羽生も表現力などでは引けをとらず、ジャンプでは前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)も準備している。チェンは実力通りの演技を見せられるか、羽生はクワッドアクセルを決められるか―。五輪本番も高いレベルの争いになりそうだ。

羽生結弦

羽生結弦(ANA)の自己ベスト(国際スケート連盟公認)は19年10月のグランプリ(GP)シリーズのカナダ杯でマークした322.59点。その後は新型コロナウイルス禍や自身のけがもあって国際大会への出場機会は限られてきた。ライバルとの力関係について、優勝した21年12月の全日本選手権後に「このままでは勝てないのはわかっています」と語った。五輪本番では、長い時間をかけて練習してきた前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)の成否が勝敗のカギを握る。

鍵山優真

シニア転向2シーズン目の鍵山優真(オリエンタルバイオ・星槎)は男子フィギュア界随一の成長曲線を描いてきた。まだあどけなさの残る18歳ながら複数種類の4回転ジャンプを繰り出し、表現力にも磨きが掛かっている。自己ベストは初出場で2位になった21年3月の世界選手権の291.77点。今回の北京五輪では団体にも出場し、フリーで自己ベストを更新するなど勢いは持続している。

宇野昌磨

平昌五輪では銀メダルを手にした宇野昌磨(トヨタ自動車)は2大会連続の出場。今シーズンは「世界のトップで戦う」という強い意志を持ち、高難度のプログラムに挑戦している。21年11月のNHK杯では、フリーでジャンプのミスがありながらも290.15点の自己ベストを記録した。4回転ジャンプを4種類5本詰め込むフリーの構成は「もうこれが僕にとってのベース」と話す。ノーミスの演技の先には300点超えが待っている。

ネーサン・チェン
(米国)

ロイター

世界選手権とGPファイナルともに3回の優勝経験を誇るネーサン・チェンにとって、唯一獲得できていないのが五輪王者の称号だ。初出場だった平昌五輪ではショートプログラム(SP)で17位発進となり、フリーで巻き返すも結果は5位に終わった。19年のGPファイナルで打ち立てた335.30点という世界歴代最高得点を引っさげて乗り込む北京五輪はリベンジの好機となる。フリーに何本の4回転を詰め込んでくるのか、プログラムの構成にも注目だ。

ビンセント・ゾウ
(米国)

ビンセント・ゾウは19年4月の国別対抗戦でマークした299.01点という高い自己ベストを持つ。21年10月のGPアメリカ杯では、フリーで4回転を5本着氷する演技をみせて優勝。平昌五輪以降、負け無しで突っ走ってきたネーサン・チェンについに待ったをかけた。2大会連続の出場となる五輪では、初めての表彰台を虎視眈々(たんたん)と狙っている。

ジェーソン・ブラウン
(米国)

ロイター

米国の団体戦銅メダル獲得に貢献した14年ソチ大会以来、2大会ぶりの五輪出場となるジェーソン・ブラウン。4回転はフリーにサルコー1本のみというプログラム構成ながら、高い表現力を武器に上位をうかがう。今シーズンはGPカナダ杯2位、フランス杯3位と好調をキープ。自身のSNS(交流サイト)に日本語で投稿をするなど、親日家としても知られている。


羽生の3連覇はなるのか、チェンが初の金メダルに輝くのか、それとも鍵山、宇野が割って入るのか――。ショートプログラムは8日、メダルの行方が決まるフリーは10日。各選手の得点に注目が集まる。