女子 五輪フィギュア女子、 得点を分析坂本が「銅」、ROC勢の上位独占阻む
坂本・樋口
大舞台で自己ベスト更新
北京五輪女子フィギュアスケートは17日にフリーが行われ、ショートプログラム(SP)で3位に付けていた坂本花織が合計233.13点と自己ベストを更新し、銅メダルを獲得した。SP2位でロシア・オリンピック委員会(ROC)のアンナ・シェルバコワが合計255.95点で金、SP4位のアレクサンドラ・トルソワ(ROC)が銀。坂本とシェルバコワとは22.82点の差があった。ドーピング騒動の渦中で出場したSP1位のカミラ・ワリエワ(ROC)はジャンプのミスが重なり、4位だった。坂本はSPに続いてフリーでも好演技を見せ、ROC勢の上位独占を阻んだ。樋口新葉はSPとフリーでトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決め、自己ベストの合計214.44で5位。河辺愛菜は23位だった。日本勢とROC勢の得点を分析、比較する。
4位以下はワリエワのドーピング問題が決着した後に確定するため、暫定の順位となる。
各選手の得点(内訳)比較
ROC勢は4回転連発、
ジャンプで得点差大きく
坂本とシェルバコワの合計点の差は22.82点、トルソワとの点差は18.60点。得点差が開いたポイントがフリーのジャンプだ。ルール上、女子はSPで4回転ジャンプを入れることができない。フリーではROCの2人は4回転ジャンプを組み込み、技術点が100点を超えた。最も得点が高かったジャンプはシェルバコワが18.66点(1本目)、トルソワが19.90点(基礎点が1.1倍になる5本目)。10点を超えたジャンプは坂本の2本に対し、シェルバコワは4本、トルソワは5本だ。ただ、4回転やトリプルアクセルといった大技を持たない坂本はジャンプ7本を全て成功、スピンやステップなども含めて好演技を見せ、演技構成点ではトルソワを上回った。
坂本
「4年間の集大成になった」
坂本花織(シスメックス)のフリーは技術点が78.90点、演技構成点が74.39点で計153.29点。SPに続きフリーでも自己ベストを更新し、SPと合わせトータルで3位となった。1位のシェルバコワとは、フリーの演技構成点でほぼ差はなかったが、技術点で20点以上の差をつけられた。フリーでは全体を通してスケールが大きい堂々とした滑りを見せた。4回転ジャンプはなかったが、単発の3回転ルッツ、3回転フリップと2回転トーループの連続ジャンプなど7本のジャンプを全て成功させた。4分間の演技を終えると両手を突き上げガッツポーズ。試合後のインタビューでは「うれしい以外に言葉が出ない。いろいろ悔しい思いをしてきたこの4年間の集大成になった」と話した。
樋口
フリーでも大技アクセル決める
樋口新葉(明大)はSPに続き、フリーでも大技のトリプルアクセルを決めた。続くジャンプで転倒するミスがあったが「ライオンキング」の曲にのり、テンポのいいステップで軽やかに滑りきった。樋口のフリーは140.93点。SPとの合計は214.44点となり5位に入った。試合後のインタビューでは「いつも転ばないようなところで転んでしまったが、それでも最後まで集中を切らさずに、雰囲気を楽しみながら滑れた。今回初めてショートもフリーもアクセルを成功できた。今回のことを忘れずにもっと成長していけたらなと思います。うれしい気持ちと悔しい気持ちの両方が味わえた」と振り返った。
河辺
「強くならないといけないと思った」
五輪初出場で17歳の河辺愛菜(木下アカデミー)はSPとフリーでトリプルアクセルに挑んだが、成功とはならなかった。持ち味のジャンプでミスが続き、フリーは104.04点。SPとの合計は166.73点となった。自己ベストに遠く及ばず「せっかく出させてもらったのにこんな演技しかできなくて申し訳ない。強くならないといけないと思った」と話した。
ワリエワ
精彩を欠き泣き崩れる
ドーピング騒動の渦中で出場が認められた15歳のカミラ・ワリエワは、ジャンプでの転倒や着氷の乱れが続き精彩を欠いた。フリーの得点は141.93点で、SPと合わせた順位は4位となり、試合後は両手で顔を覆い、力を出し切れなかった得点を見て泣き崩れた。
シェルバコワ
優雅に舞い逆転の金
昨季の世界選手権女王のアンナ・シェルバコワは、フリーの滑り出しで4回転フリップを2度決めて勢いに乗った。フリーの技術点は100.49点、演技構成点は75.26点で、合計175.75点。2位だったSPの得点と合わせ255.95点をとり1位となった。
トルソワ
4回転5本で高い技術点
SPで4位だったアレクサンドラ・トルソワは5本の4回転ジャンプに挑んだ。着氷が乱れたジャンプもあったが、フリーの技術点で106.16点をとり、演技構成点70.97と合わせ合計は177.13点。フリーではトップだったが、SPとの合計ではシェルバコワに4.22点届かず、トータルで2位となった。
上位独占の可能性も高いと言われた実力者ぞろいのROC勢の一角を崩し、坂本は2010年バンクーバー五輪での浅田真央さん(銀メダル)以来、日本勢4人目の表彰台となった。大技を持たずとも、表現力や演技全体の完成度で得点を伸ばせることを証明したメダルだった。