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バブルの風景 「異変はこうして起きた」 バブルの風景 「異変はこうして起きた」
中国株バブル
  • 中国株バブル

  • 欧米住宅信用バブル

  • 米ITバブル

  • 日本バブル

 「バブルかどうか、はじけてみるまで分からない」。巧みな金融政策運営からマエストロ(名指揮者)と称されたグリーンスパン元米連邦準備理事会(FRB)議長の言葉だ。歴史上、バブルが何度となく繰り返されてきたのを知りながら、人々は「This time is different(今度こそ違う)」と異常さから目を背け、正当化する理屈をみつけては急騰する株価や地価を追いかける。目を凝らせば、その時々に、マーケットの内でも外でも平時と違う異変、「バブルの風景」が広がっている。

中国株バブル

官民の狂騒曲、若者はスマホで一攫千金の夢

 今夏、世界を巻き込んで崩壊した中国株のバブルは、官民合同の狂騒曲だった。過剰な投機が膨らむなか、株価の反転下落が混乱の引き金になりかねないと恐れた政府は、息がかかった国営メディアを通じて「上げ相場は始まりに過ぎない」とあおった。

証券口座新規開設数の急増

 2015年が明けると、証券口座の新規開設数は月間で東京都の人口に匹敵するペースに加速した。何らかの持続不可能な異変が起きているのは明らかだった。

スマホで一攫千金を狙う若者

 一説では1~3月の新規口座開設の6割を「80后(バーリンホウ)」と呼ばれる1980年以降に生まれた世代が占めた。若者がスマホを片手に一獲千金を狙い、バブル相場の最後のひと押しを担った。

スマホで一攫千金を狙う若者

 一説では1~3月の新規口座開設の6割を「80后(バーリンホウ)」と呼ばれる1980年以降に生まれた世代が占めた。若者がスマホを片手に一獲千金を狙い、バブル相場の最後のひと押しを担った。

中国の信用取引残高が急増

 その結果が短期マネーの異常な流入だった。借金で自己資金の数倍の取引を可能にする信用取引の残高はピークには40兆円まで膨張した。

中国の信用取引残高が急増

 その結果が短期マネーの異常な流入だった。借金で自己資金の数倍の取引を可能にする信用取引の残高はピークには40兆円まで膨張した。

欧米の住宅信用バブル

カネ余りから陶酔へ、加熱の「3条件」そろう

 バブルの発生と崩壊は連鎖する。中国株の高騰と急落の遠因は、2008年のリーマン・ショック後に中国政府が打ち出した4兆元もの巨額の景気対策だった。中国の各地で膨らんだ不動産投機を当局が封じ込めると、行き場を失ったマネーが株式に走った。そのリーマン・ショックの起点となった欧米の住宅・信用バブルは、「バブルの3条件」がきれいにそろった21世紀最初の世界的なバブルだった。

米国の住宅価格が高騰

 米国の住宅価格は2006年までのわずか数年で2倍に値上がりした。バブルの条件その1は、金融緩和によるカネ余りだ。FRBの度重なる利下げで米国の政策金利は当時としては異例の1%まで低下。「サブプライム」と呼ばれる、本来ならクレジットカードすら持てない低所得層にまで低利の住宅ローンが行き渡った。

シャドーバンクが膨張

 バブルの条件その2は、レバレッジ(てこ)。金融技術を使い、1のカネを10、20、30と膨らませて投機につぎ込む。この時活躍したのは債務担保証券(CDO)など証券化商品やクレジットデリバティブだ。複雑な仕組みとレバレッジが金融機関に広くいきわたり、規制当局の目が届かない「影の銀行(シャドーバンキング)」が膨張していった。

こんな発言もあった

「クレジットデリバティブがリスク分散を加速し、金融システムの安定に貢献している」(2005年の発言)


グリーンスパン・FRB議長(当時)

欧州の住宅価格が高騰

 バブルの3つ目の条件は、ユーフォリア(陶酔感)。グローバル経済は順調に成長し、インフレも抑制され、世界は冷戦後の「平和の配当」を糧に安定期に入った。そんな幻想が社会に浸透し、米国だけでなく南欧や中東欧の大衆までこぞって住宅投資に走った。

 宴は永遠には続かない。FRBは2004年から金融引き締めを始め、2006年には政策金利は5%を超えた。余熱が冷めるとサブプライムローンなど元々無理のあったところから綻びが広がり、2007年の夏に世界的なマーケットの機能不全が表面化した「パリバ・ショック」が起き、世界は危機モードに入っていった。

シャドーバンクが膨張

 バブルの条件その2は、レバレッジ(てこ)。金融技術を使い、1のカネを10、20、30と膨らませて投機につぎ込む。この時活躍したのは債務担保証券(CDO)など証券化商品やクレジットデリバティブだ。複雑な仕組みとレバレッジが金融機関に広くいきわたり、規制当局の目が届かない「影の銀行(シャドーバンキング)」が膨張していった。

欧州の住宅価格が高騰

 バブルの3つ目の条件は、ユーフォリア(陶酔感)。グローバル経済は順調に成長し、インフレも抑制され、世界は冷戦後の「平和の配当」を糧に安定期に入った。そんな幻想が社会に浸透し、米国だけでなく南欧や中東欧の大衆までこぞって住宅投資に走った。

 宴は永遠には続かない。FRBは2004年から金融引き締めを始め、2006年には政策金利は5%を超えた。余熱が冷めるとサブプライムローンなど元々無理のあったところから綻びが広がり、2007年の夏に世界的なマーケットの機能不全が表面化した「パリバ・ショック」が起き、世界は危機モードに入っていった。

こんな発言もあった

「クレジットデリバティブがリスク分散を加速し、金融システムの安定に貢献している」(2005年の発言)


グリーンスパン・FRB議長(当時)

米ITバブル

「ハイテクを軸にしたニューエコノミーは米国の繁栄の象徴だ」クリントン大統領=当時、1998年の発言

 IT(情報技術)の恩恵で革命的に生産性が上がり、米国は「インフレなき高成長」の時代に入った――。ITバブル時に台頭した「ニューエコノミー」論は、投資マネーのリスク感覚をマヒさせ、ハイテク株の異常な値上がりを演出した。

時価総額でみる「消えた」企業

 ワールドコム。巨額のM&A(合併・買収)を繰り返し、ピーク時には時価総額が約1700億ドル(約20兆円)に達した。ITとエネルギー取引を融合して脚光を浴びたエンロンも、不正会計の発覚などを機に経営破綻した。こうした「消えた」企業は、バブルの熱狂がもたらす規律の緩みを象徴する。

時価総額でみる「消えた」企業

 ワールドコム。巨額のM&A(合併・買収)を繰り返し、ピーク時には時価総額が約1700億ドル(約20兆円)に達した。ITとエネルギー取引を融合して脚光を浴びたエンロンも、不正会計の発覚などを機に経営破綻した。こうした「消えた」企業は、バブルの熱狂がもたらす規律の緩みを象徴する。

米財政に大きな傷跡

 政治の世界にも「バブルの風景」は侵食した。キャピタルゲイン(株式の値上がり益)の拡大は税収の急増をもたらし、米国の財政収支は1970年代以降で初めての黒字に転換した。黒字を引き継いだブッシュ政権は富裕層向けに大型の減税を断行。しかし、バブル崩壊後に税収は細り、「テロとの戦い」の戦費も加わって米財政に傷痕を残した。

米財政に大きな傷跡

 政治の世界にも「バブルの風景」は侵食した。キャピタルゲイン(株式の値上がり益)の拡大は税収の急増をもたらし、米国の財政収支は1970年代以降で初めての黒字に転換した。黒字を引き継いだブッシュ政権は富裕層向けに大型の減税を断行。しかし、バブル崩壊後に税収は細り、「テロとの戦い」の戦費も加わって米財政に傷痕を残した。

日本のバブル

そして日本。わずか四半世紀前に確かにこの国も「バブルの風景」に覆われた。高騰する地価と「財テク」で潤った企業は気前よく交際費とボーナスを振りまき、老若男女がバブル消費に踊った。

そして日本。わずか四半世紀前に確かにこの国も「バブルの風景」に覆われた。高騰する地価と「財テク」で潤った企業は気前よく交際費とボーナスを振りまき、老若男女がバブル消費に踊った。

タクシー輸送量 は今と比べ2倍

 会社のタクシーチケットは使い放題で、銀座や渋谷では1万円札を振り上げて呼び止めようとしてもタクシーはつかまらなかった。そんな「バブル自慢」を先輩社員から聞かされた人も少なくないだろう。1989年度のタクシー輸送人員は現在の2倍強、延べ33億人に達した。

 「シーマ現象」。バブル期の高級車ブームを象徴するフレーズだ。1988年に発売された日産自動車のシーマは、最上級車種で500万円台という価格設定にもかかわらず大ヒット。1992年までに約15万台が売れた。

 「シーマ現象」。バブル期の高級車ブームを象徴するフレーズだ。1988年に発売された日産自動車のシーマは、最上級車種で500万円台という価格設定にもかかわらず大ヒット。1992年までに約15万台が売れた。

ブランデーの消費が7倍に

 ヘネシー、レミーマルタンなどの高級ブランデーと、高級シャンパンをアイスペールにぶちまけた「カクテル」が1杯100万円。そんなばかばかしい飲み方にも支えられ、ブランデーの国内消費(課税数量)は1990年度に4万キロリットル超と現在の7倍近くにまで膨らんでいた。

日本のバブル

バブルは再び繰り返されるだろうか。経済学者ガルブレイスは名著「バブルの物語」でこう語っている。

バブルは再び繰り返されるだろうか。経済学者ガルブレイスは名著「バブルの物語」でこう語っている。

制作・データ分析:
板津直快、高井宏章、篠崎健太、鎌田健一郎、河本浩
ウエブ制作協力:
ノースショア株式会社

日経本誌の誌面では・・・ 日経本誌の誌面では・・・

バブルは繰り返す――。11月16日付日経朝刊の「データディスカバリー」では、世界で起きたバブルの異常値に注目。バブルがはじけるまでの「乱高下」をデータで紹介しています。

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