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カロリーから廃棄まで 大国にみる世界の食事情

成長を遂げる新興国と、成熟する先進国。経済力や人口の変化は、「食」の嗜好や購買力にどんな影響を与えたのか。データから探ってみよう。

2015年の国内総生産(GDP、名目・米ドルベース)は米国と中国、総人口は中国とインドが突出し、アジアや欧州、中南米、アフリカ勢が続いている。これら経済・人口規模の大きい16カ国では、食生活にどんな変化が起きているのだろうか。

カロリー高い米欧先進国 南アジア勢の

1.5倍

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各国の供給カロリーと増減を見る

生産や輸入を通じ国内で供給されたカロリー(国民1人・1日あたり)を比較すると、米欧先進国の高さが目立つ。16カ国で最も高い米国を筆頭に、4カ国が3500キロカロリー超。インドなど南アジアの3カ国の1.5倍近い水準だ。
直近10年間の増減率でみると、インドネシアとロシアが1割以上増えている。逆に最も低いのは日本で、5%近く減った(12月21日付の日本経済新聞朝刊参照)。

供給カロリーの差は、肥満度にも表れている。18歳以上で、肥満とされるBMI(体重を身長の2乗で割った体格指数)25以上の人の比率(2014年)は米国の67%を筆頭に、欧米勢が高い。インドなど南アジア勢は20%前後と低めだ。5年前からの増加幅は経済成長が目立った中国が4.3ポイントで最大。これにナイジェリアやインドネシアが続く。

経済成長でも低い肥満率

インド 食の秘密

出典情報をみる

経済成長で中間層や富裕層が拡大しているにもかかわらず、供給カロリーや肥満率は下位のインド。カロリーを主な食料分類別にみると、肉類は1人1日あたり15キロカロリーと16カ国で最低。最も多い中国の32分の1しかない。宗教上の理由で菜食主義者が多く、穀物や豆が中心であるインドの食文化を映している。

各国が必要な食料を確保する主な手段は自国での生産と、他国からの輸入だ。国内に供給する食料の生産量をみると、中国を筆頭にブラジル、インドが続く。
10年前と比べた増減ではこれら3強のほか、バングラデシュやインドネシアの伸びも目立つ。一方でイタリアと日本は2ケタ減、英国とフランスも減少している。

中国で輸入が伸びている主な食料

乳製品 エンドウ豆 牛肉 ワイン

輸入量でも中国が突出、10年前からはインドとともに倍増している。
中国はどんな食料を輸入しているのか。伸びが目立つのは豆苗の原料などに使うエンドウやワイン、牛肉など。特に牛肉は火鍋の材料として需要が高まっており、日本の牛丼チェーンや世界の市場にも影響を与えている。
日本は生産だけでなく輸入も減少。環太平洋経済連携協定(TPP)が動き出せば、貿易に弾みがつくだろうか。

各国で生産・供給される食料も、すべてが人の口に入るわけではない。中国やブラジル、インドなど流通網の整備が遅れている新興国を中心に大量の食料が廃棄されている。16カ国の合計は3億トンに迫り、この10年で6割近く増加。なかでもブラジルは4倍を超える伸びだ。
2024年に80億人、2056年には100億人を突破するとされる世界の人口。巨大な胃袋を賄う食料確保策とともに、無駄を抑えた効率的な生産・流通のあり方にも知恵を絞っていく必要がある。

制作・データ分析:
下村恭輝、岩本貴子、大槻陽子、白尾和幸、鎌田健一郎、佐藤健
ウエブ制作協力:
ノースショア株式会社

日経本誌の誌面では・・・ 日経本誌の誌面では・・・

いまの日本人の平均摂取カロリーは、実は戦後まもない1950年より低くなっている――。12月21日付の日経朝刊「データディスカバリー」で、その変化や背景をビジュアルに描いています。

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