人間以上に「人を殺す生き物」は蚊だ。マラリアやデング熱など多くの感染症を媒介。特にマラリアによる死者は世界で年間40万人を超える。
狂犬病、眠り病をそれぞれ媒介する犬、ツェツェバエなどを含め、万人単位の死者を出す生き物は7つ。その合計死者数の6割が感染症媒介だ。
世界の三大感染症とされるマラリア、結核、エイズ(HIV)。新たな患者数はマラリアが年2億人を超え突出、死者数は結核とエイズが100万人を超える。エイズのように薬さえあれば発症を抑えられる感染症でも、経済的な理由で発展途上国を中心に多くの死者を生み続けている
グローバル化を背景に、感染症が拡大するスピードも加速している。2009年春にメキシコで流行が始まった新型インフルエンザは、隣の米国でも発症後わずか2カ月で約110カ国に拡大。ジカ熱も2015年に流行が本格化してから1年余りで世界に広がった。
日本でも感染症による死者は増えている。死因が「感染症および寄生虫症」の人は2015年までの20年間で33%増加。なかでも高齢化を背景に腸管感染症や敗血症が倍増している
インフルエンザによる死者は、その年の流行状況によって波はあるものの、2015年は2000人を超え過去20年で最高となった。
「過去の病」と思われたのが一転し、再び広がる感染症もある。代表例が梅毒で、日本では特にここ5年間で急増。2016年(11月末時点)の感染者を年齢別にみると、かつての流行を知らない20代が最も多いのが目を引く。
結核も克服の道は険しい。世界保健機関(WHO)が目標とする人口10万人あたり年間新規患者10人以下の基準を、経済開発協力機構(OECD)加盟国のうち韓国やラトビア、日本など10カ国がクリアできていない。
感染症克服のため、抗生物質を長年使い続けたことで抵抗力を持った「耐性菌」も生まれている。薬が効かない耐性菌による世界の死者数は今後30数年で14倍の1000万人に増えるとの予測がある。これは現在のがんによる死者数(820万人)を上回る規模だ。