Data Discovery データディスカバリー

感染症の警告 人間は脅威に勝てるか

感染症のリスクが世界で高まっている。マラリアや結核に加え、新型インフルエンザやジカ熱といった新しいウイルスも次々に国境を越え、多くの人の健康と命を脅かす。抗生物質が効かない耐性菌も登場。医療技術を試すように感染症が突きつける「警告」をデータから探る。

感染症とは?

TOPIC 01 最も「人を殺す生き物」は蚊 感染症媒介で年72万人

年間で万人単位の死者を出す生き物

#01蚊72.5万人
#02人間47.5万人
#03ヘビ5万人
#04犬(狂犬病)2.5万人
#05ツェツェバエ サシガメ 巻き貝各1万人

人間以上に「人を殺す生き物」は蚊だ。マラリアやデング熱など多くの感染症を媒介。特にマラリアによる死者は世界で年間40万人を超える。

狂犬病、眠り病をそれぞれ媒介する犬、ツェツェバエなどを含め、万人単位の死者を出す生き物は7つ。その合計死者数の6割が感染症媒介だ。

TOPIC 02 マラリア患者、新たに年2億人 三大感染症なお脅威

三大感染症の健康被害

マラリア

新規患者2.14億人
死亡43.8万人

結核

新規患者1040万人
死亡43.8万人

エイズ(HIV)

新規感染210万人
死亡110万人

世界の三大感染症とされるマラリア、結核、エイズ(HIV)。新たな患者数はマラリアが年2億人を超え突出、死者数は結核とエイズが100万人を超える。エイズのように薬さえあれば発症を抑えられる感染症でも、経済的な理由で発展途上国を中心に多くの死者を生み続けている

TOPIC 3 2カ月で100カ国超に拡大も 加速する感染スピード

2009年の新型インフルエンザ (H1N1)

メキシコで発症

60日で約110カ国に拡大

10日で約20カ国
30日で約40カ国
60日で約110カ国

2013年のジカ熱

ポリネシアで発症

2年間で69カ国に拡大

2014年には5カ国
2015年には22カ国
2016年には69カ国

グローバル化を背景に、感染症が拡大するスピードも加速している。2009年春にメキシコで流行が始まった新型インフルエンザは、隣の米国でも発症後わずか2カ月で約110カ国に拡大。ジカ熱も2015年に流行が本格化してから1年余りで世界に広がった。

TOPIC 4 20年で1.3倍に 日本でも増える感染症死者

死因が「感染症および寄生虫症」の人

1995年
2015年
1.9万人
2.5万人
33%の増加

死因がインフルエンザの人

日本でも感染症による死者は増えている。死因が「感染症および寄生虫症」の人は2015年までの20年間で33%増加。なかでも高齢化を背景に腸管感染症や敗血症が倍増している

インフルエンザによる死者は、その年の流行状況によって波はあるものの、2015年は2000人を超え過去20年で最高となった。

TOPIC 5 克服したはずの感染症が… 梅毒が拡大、最多は20代

梅毒の感染者数

全体では7.1倍の増加
637人
4,518人
20歳代では8.0倍の増加
162人
1,301人
40歳代では9.6倍の増加
92人
882人
  • ALLALL
  • 20歳代20歳代
  • 40歳代40歳代

結核罹患者が多い国、少ない国 OECD加盟35カ国でみると 2015年 人口10万人あたりの数値

韓国80人
ラトビア41人
ポルトガル23人
メキシコ21人
日本17人
スペイン12人
米国3.2人
アイスランド2.4人
10人=WHOが目標とする人数

「過去の病」と思われたのが一転し、再び広がる感染症もある。代表例が梅毒で、日本では特にここ5年間で急増。2016年(11月末時点)の感染者を年齢別にみると、かつての流行を知らない20代が最も多いのが目を引く。

結核も克服の道は険しい。世界保健機関(WHO)が目標とする人口10万人あたり年間新規患者10人以下の基準を、経済開発協力機構(OECD)加盟国のうち韓国やラトビア、日本など10カ国がクリアできていない。

TOPIC 6 薬が効かない感染症も 「耐性菌」死者1000万人へ

耐性菌による世界の死者数推計

70万人
1000万人
14倍の増加
将来は耐性菌感染拡大の危機

感染症克服のため、抗生物質を長年使い続けたことで抵抗力を持った「耐性菌」も生まれている。薬が効かない耐性菌による世界の死者数は今後30数年で14倍の1000万人に増えるとの予測がある。これは現在のがんによる死者数(820万人)を上回る規模だ。

データディスカバリーは今回で終了します
ありがとうございました!
また会う日まで!
制作・データ分析:
小玉祥司、鎌田健一郎、久能弘嗣
ウエブ制作協力:
ノースショア株式会社
制作・データ分析:
小玉祥司、鎌田健一郎、久能弘嗣
ウエブ制作協力:
ノースショア株式会社

日経朝刊の誌面では・・・ 日経朝刊の誌面では・・・

結核感染状況が主要7カ国(G7)で最悪の日本。2月20日付の日経朝刊「データディスカバリー」では、エイズ(HIV)や梅毒も含めた感染症の今についてビジュアルに描いています。

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